死のイメージを変えた、Bowie”★”

ブラックスターのアルバムジャケット、当方の手書き
全角文字の★がタイトルっておもしろい。英語圏では単にBlackstar とあらわしていた。

30年ぶりにボウイのアルバムを聴いた。この30年間は音楽がなくても生きていけるくらいに自立していたので、聴いてなかった。

音楽は楽しく聴く趣味であって、それがないと朝布団から出れないとか、働きに出れないとか、そんな事はなくなった。

今回お盆シーズンに死者のことを考えていてボウイを思い出し、ボウイの死の直前にリリースされた“★”を聴くことにした。
DLすると、7曲あった。

  • ★(Blackstar)
  • ‘Tis a Pity She Was a Whore
  • Lazarus
  • Sue (Or in a Season of Crime)
  • Girl Loves Me
  • Dollar Days
  • I Can’t Give Everything Away

白状すると、デキについては期待していなかった。なんでって、ボウイがもう若くなかったからだ。多くのアーティストは年をとると、ひどい作品を作る(ことがある)。作家などがそうだ。安部公房、最晩年の作品はアンマリだと思った。あとカズオ・イシグロは世界の文豪について調べ、その代表作のほとんどが35歳から45歳に書かれていると発見したそうだ。

年をとるって、ほんと大変なことだ。ましてボウイは、世界中のイケメン1万人が束になっても敵わないくらい、人という種族の美の最高形態だった人。そのうえ彼の表現には陳腐のかけらもなくて、難解の瀬戸際のギリギリのポップで、人生のどん底にいる人の胸にも響くような突き抜けたリアルさがあった。だから、彼の音が鳴り出すと、そしてあのクセのある歌声がきこえると、自然と身体が動き出しているのだった。

そんな、全てを兼ね備えいるかに見えたボウイも、中年になると容姿はじめいろいろ衰えていくことでウツになったと、何かで読んだっけ。

けども、若くして死なないでくれて良かったと、これ聴いたら本気で思った。

関連記事をみるとボウイは、今作でそれまでの音楽スタイルとは別の新たな挑戦を行っているそうだ。具体的には、参加メンバーが初参加のジャズの人たちらしい。言われてみれば管楽器(トランペット?サックス?)が威力を発揮しているので、ジャズっぽい印象がする。この楽器の効果は見事で、不定形のリズムで右から左から大きく、また小さく鳴り響いて、ときに切なく、ときに奇妙な境地にいざなう。

やっぱり楽器界で一番すごいのサックスとかトランペットなのか? としろーと考えが浮かんだりした。ただ、ボウイの最期のアルバムの最後の曲“I Can’t Give Everything Away”で、ボウイの歌声のあと最後の最後に鳴っていたのは、ドラム、そしてエレキギター、シンセサイザーだった。

歌声、ドラム、エレキギター、シンセサイザーが鳴り止んだあと引き込まれる深い余韻は、あの世へと思い巡らす余韻だ。これの前曲“Dollar Days”の冒頭で、カサカサと紙の音がしていた。手紙を封筒に入れる音だ。あの世から、この世に生きるわれわれへ手紙を書き送っている。何が書いてあるのか? “Dollar Days”の歌詞がわからない英語音痴の自分にはさっぱり分からない。けれど、あの世とこの世の間、死と生の間にボウイの歌があることだけは感じる。

“Dollar Days”の歌詞和訳を書いてくれているブログ。↑↑↑↑ そういうことだったのか・・・・
English evergreens(英国の美しい自然と伝統と文化)への懐かしさを幾分は抱きつつも、それ以上にもっともっともっと大事なものが、彼の心を占めている。

★の全編から死を強く意識した思念が伝わってくる中、忘れてならないのは、すべてがダンサブルであることだ。
どの曲もついつい身体が動きだしている。
表題曲★(Blackstar)のPVがいい見本になる。
大勢の登場人物たちが、病んだ暗い表情で、呪われたように身体を痙攣させている。
最初、何をやっているんだ? とガン見してしまったが、ああそうだ、これもダンスなんだと思い至った。
当方、EXOや2PMなどのK-POPのファンであるから日頃見事なダンスパフォーマンスを見慣れている(自室でだけど)。
ああいうのばかりがダンスではない。
ああいうダンスは、練習に練習を重ね、健康で頑健な若者しか体現できないといっていい。
振り付けも、身体可動域の限界をつきつめたような、高度な技巧が凝縮されている。
K-POPばかりではなく、ビヨンセはじめR&Bをパフォーマンスするようなミュージシャンも、こぞってすごいダンスを踊っていて、目をみはる。
ステージ上で立って歌だけ歌っている人は森進一くらいなものだろう。

健康ではじけ切って、他人と競い頂点を目指し極めに極めた、誰も真似できないパフォーマンス。

果たしてそれ(だけ)が、音楽といえるのか?
ダンスと言えるのか?

Lazarusも、かつて滅んだ恐竜の雄叫びみたいなサックスがノロノロと死にかけ感を醸し出している、聴いたことないタイプの曲。
これのPVもすごくて、病床から這い上がって踊っているボウイがなんともはや。
ここでもダンスだ。
若い頃『地球に落ちてきた男』も『ジャストアジゴロ』も見にいったけど、こっちのがはるかにインパクトがあってかっこよくて感涙ものだ。
病に苦しむ病床、起き上がって手紙を書く、ベッドの下になんかいる、ダンスする。
自画像のような、ドキュメンタリーのような、けど、どこまでも音楽表現。
ボウイはみずからの死もパフォーマンスした。
誰もやったことないことを。


長年ボウイのプロデューサーだったトニー・ヴィスコンティのコメント。未来にむけて。


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