MUCCの新譜『脈拍』聴いた。

★ ☆ ☆ ☆

「ムックってどうしてるのかな~」と思った。

検索すると今年が結成20年にあたるみたいで、しかも1月にニューアルバムを出していた。しかもそのプロデューサーがkenさんだと言うのだ。えっまたっ!?この前もBAROQUEのgirlを手がけていたのをわたしも紹介したばかりだ。果たしてそれはどんな曲なのか??と、とりあえず調べると、アルバムに先駆けて出したシングルがありYouTubeにあがっていた。それがなんと「ハイド」というタイトルではないか!!マジびびったね。いくらkenさんがハイタンへの報われない愛に心が引き裂かれているからってなんもムックに歌ってもらわないでも。そんなに愛してるの~やだぁ~とわたしはひとりでほほを赤らめた。しかしよく見ると「ハイド」ではなく「ハイデ」だったのである。びっくりしたなぁもうというかハイデってどういう意味??と調べると荒野、もしくはドイツ語による花の名前のようだった。つまりほぼハイドなのだった(違)。というか、ハイダからハイドまでのダ行は全部ハイドってことでいいと思う。ってえことはアルプスの少女ハイヂはどうすんだ、アルプスの少女までハイドにしていいのか??イメージ問題とかスイスの著作権の人に怒られるとか。けど幸いなことに、そしてとても意外なことに、アルプスの少女はハイヂ、ではなくてハイジ、なのだった!!

となるとわたしはハイデだけを聴くのはイヤでどうせならアルバム全部聴きたい派なので、iThunesで購入していたのであった。

★ ★ ☆ ☆

で、さっそく聴いたところ、ほんとにもーっどうしちゃったのか。kenさんのプロデューサーとしての手腕が異様なまでに冴え渡っている。いや、そりゃどこからどこまでがken氏の仕事かはわからないけども、間違いなくムックの持ち味が最大限に引き出され、悪魔降臨めいた呪わしい曲であろうとも堂々と胸を張っている。さらにムックの面々の伸び伸び生き生きしているサマは悪童の水たまり遊びのごとく。全体としては暗いor明るい、ポジティブorネガティブといった2極論を超えたエネルギーに満ち聴後感は幸福だ。今年1月のリリースアルバムであるけれど、早くも2017年のベストアルバム候補に挙げていい。

ってことで一曲一曲見ていこう。
また、アルバム全部を買うお金のない人のために単品購入に際してのオススメに◇マークを入れた。(◇1←オススメ度1番。◇2←オススメ度2番目。◇がついてないのがオススメでないわけではなく、ムックを知らない人のための目安)

★ ★ ★ ☆

  1. 脈拍  ◇1  
    アコースティックギターのはかなく切ない旋律にラウドつうのかヘビーメタルのドコドコした野太い重低音が絡まる聴き応えのある曲だ。

このヘビーメタル(当方あまり用語はわかっていないんだが)、近年ではBabyMetalという人気グループの出現により脚光を浴びている。ヘビーメタルのドコドコ部分は野獣の怒りのようで不穏で攻撃的だ。教育委員会の人が「いやーねえ」と眉をひそめるような音楽表現。そのためBabyMetalはどんなに人気があっても紅白に出場することはないだろうと言われている(わたしの周囲の熱狂してる人が言ってた)。しかしこの音楽表現は高い演奏技術と確かな歌唱力を要求されるため、ドコドコしてりゃそれでいいってもんでもないらしい。

わたしは以前からこのドコドコ音の由来が何なのか、なぜこれがムックなどのあるタイプの音楽家たちの音楽に必ず入っているのか、謎に思い考え続けていた。答えとして思いついたのは、

  1. これがないと物足りない。とにかくこれが好きだから
  2. 他の品のいい音楽との差別化、もしくは挑発
  3. 容易に社会に容認されてなるものか、という反骨
  4. なんらかのルサンチマンの表出
  5. すでに音楽ジャンルとして確立している。やりたい人がやり、やりたくない人はやらない
  6. ライブなどでエネルギーを爆発的に発散するのにちょうどいいため、ニーズがある

どうだろう。どれも当たらずとも遠からずだと思うが。
あと、もうひとつ気付いたことがある。こういうドコドコした音に、さまざまな他の音や美しい旋律、あるいは魅力的なボーカルを組み合わせ変化を付ける面白さがあるってこと。組み合わせの妙味によりユニークな曲ができあがるのだ。中には最初から最後までドコドコのみのバンドもありそうだが、本アルバムのムックは、全編をラウド音で固める曲は作っていない。ちなみに脈拍の場合、 4分51秒中、1分20秒ほどがラウドにドコドコしていたので、25%ほどの割合だった。

  1. 絶体絶命
    最初からすっ飛ばして不穏な激しい曲でありつつ、「音楽作りって楽しそうだな」と思わせるイキのいい曲だ。こちらもだいたい25%くらいの割合でドコドコがある。

  2. CLASSIC
    こちらはドコドコ音0パーセントの、美しくキャッチーなメロディと歌詞だ。

  3. KILLEЯ
    歌謡曲的要素も入った楽しい曲、と思ったらやはりドコドコが。ドコドコ音は約1分くらいあるかな。やはりこれがないと始まりませんね。
    いろんな要素がぶっこまれて急展開していく元気でるやつ

  4. BILLY×2 ~Entwines ROCK STARS~ ◇2
    この曲は毛色が違ってて、ヘビーメタルというより「ロカビリーロック」?に通じる。
    実際、ビリーって言葉の韻を踏んでいくのがミソ。
    ストレートにロックな曲で、珍しいくらい生々しい本音が感じられる曲だ。それに、日本のロックの歴史というものを、感じさせる。よくもわるくも、歴史がすでに存在している。

これで思い出したんだけど、数年前にカラオケでわたしが9mmの「カモメ」を歌ったら、エリートコース邁進中のものすごい若いDrが自分も9mmを聴くんだと話しかけてきて、他にも2、3のバンド名らしきものを挙げてきた。で、こっちも他のバンド名を挙げたら、なんかいやーーな顔をされた。何? 序列でもあるのあなたの中に?ロック界の階層でも?って思った。他のカラオケの時は、やはりエリートコース邁進中の(なので今はうちの病院にはいない)中堅のDrがミスチルを歌っていて、ミスチルの歌って社会の上層の人にもアピールしているんだなと感心したものだ。確かにミスチルにラウドな音入ってないだろうしなぁ。今頃気がついたかって感じだけど。

  1. りんご  ◇2
    イントロからしてスキだわ。井上陽水の旋律「氷の世界」だと思うけど、あれがアレンジされてておもしろい曲。
    「窓の外ではりんご売り」という元歌からして謎のフレーズから来ているんだろう、りんご。
    思えば陽水の時代には未来があった。事実、陽水は『氷の世界』で大スターになったし、かなりの大金持ちになったろうし、今も大御所として君臨してるはずだ。
    今の時代、「氷の世界」くらいのクオリティの曲は大勢の人が作ってるけど、誰も陽水のようなスターにはなれそうにない。

このアルバム、「未来」という言葉が多用されているんだけど、この歌では「さよなら未来」という文脈。未来と決別しないといけないってことかな。
複雑な気持ちだ。

  1. EMP ◇1
    このイントロ好きだ。歌詞で何かを語ったかと思うと例のドンドコで、また語ってドンドコで。
    今度カラオケに行ったら「最近悪魔教にハマってます」と宣言して熱唱したい。←難しいので無理だと思うけど

  2. 故に、摩天楼 (ALBUM MIX) ◇2
    一転して明るいパワーに満ちた安心感を与える曲だ。やはり、こういうのもないと、小学生だって聴いているかもしれないし。平凡な印象の曲でも手を抜かずちゃんと作っている。ちゃんと作ることで見えてくる未来があるって思った。

  3. 秘密 
    アーバンでアンニュイで、都会派の恋の物語となっているっぽい。

  4. コミューン ◇3
    怪しい秘密結社ぽくてよい。
    音が派手で華やかだ。
    虹色のかもめが咲いたって‥‥ワンダーランドすぐるっ
    「僕らは失敗さ」ってのが強烈でいい。
    うん、確かに、失敗失敗。
    失敗と思うとなんか納得だ。

  5. 勿忘草
    フォーク調ロックで切ない。
    もっとギターがメソメソ咽び哭てもいい。音階?がくくくっと上がっていくところが快感だ。
    ボーカルが以前より表現の幅が増した。かなりグッとくる。無敵に近い。

  6. シリウス ◇1
    アルバム単位で聴くとここらへんで疲れてくるため、むしろ単体で聴いた方がいいかも。その方がこの曲の良さが味わえそう。元気いっぱいの曲なので静かに生きたい人はやめとくとか。4分59秒の長い尺がまた合っている。

  7. 孵化 ◇2
    何かに憑依されたみたいにノリノリで遊んでます。壮大な叙事詩が展開されている。ときどきドコドコと重低音も忘れていない。5分55秒と長い曲なので、これを聴くときはこれだけ、でいいかも。「これから孵化タイム」と宣言してから。

  8. ハイデ ◇1

イントロは、アコースティックギターのレトロな音色。

唄がすぐに始まって、「明日 世界は笑顔で輝くでしょうか?」って言う。
穏やかで憂いを帯びて、でも少し固い声で言う。

明日 世界は笑顔で輝く/涙で溺れる のか? と、遠くから眺めるように、蚊帳の外に置かれた人みたいに言う。

明日、ということは、今日ではない。
世界、ということは、自分ではない。
いってみれば自分はどこにもいない。
このことはあらためて終盤に
「そこにあるのは『自分』と『それ以外』に別れた たった二つの世界」
と唄われる。

なぜそうなってしまったのだろう?
紙飛行機を飛ばしてもどこにも届かないのが世界だから。
世界は彼らの紙飛行機に応えはしない。
世界は紙飛行機を経済に変えて、ぐるぐる回転させ続けるだけだ。

曲と唄は「今夜 流星はブルースを」で最高潮に盛り上がる。
流星が何を意味するか? たとえば、憧れのスター。
憧れ、追いつこうと熱望したスター、もしくはかつての夢の形だと思う。

明日 世界は笑顔で輝く/涙で溺れる のかどうか?
このフレーズが、疑問形ではなく予想形に形を変えて、もう一回出てくる。
その時風が、頬(という肉体。リアルな自分)を撫でるんだけど、この場面展開が映画みたいに目に浮かんできて魅力がある。

その間に言葉としては「世界」と、今までと同じだけれど、何かが変性して違うものになっている。

で、ハイデー♪
でめさめさ盛り上がる。
ライブとかですんごい合唱で盛り上がりそうだ。何なら少年少女合唱団が参加してモリモリに盛り上げて歌ったり。

ハイデとは、風が吹いて、周囲を見渡したら広がっていた場所。
(ことによれば、一度は捨ててきた故郷かもしれない)
決して憧れたり、目指していた場所ではないのだけど、こんなに歌い上げることできる。
それは、この場所に、同じ苦しみを味わう人々がいるから。
それに、ここにこそ君がいるから。

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余談


ミュージックビデオのロケ地は、茨城県。彼らの故郷。
遠くに見えるのは筑波山で、関東平野唯一の山らしい山。


ハイデは日本の隅っこの世界の縁(へり)と言っていいような場所かも。
もちろんだからって、茨城県以外の人にも聴いてほしいですね。


おおわくでいえば、日本全部が縁みたいなものですから。

参考にしたインタビュー記事 結成20周年を迎えたMUCCのインタビュー公開!10年分のシングル表題曲&カップリングを再録やリマスタリング!バンドの過去と現在を繋ぐ金字塔的ベスト盤2作品を3/29同時リリース! | 激ロック ニュース


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