机の上の本図書館でみつけた一冊。

・・・・という言い方は、よそよそしいかもしれない。

なにせ高校生から二十歳前後のわたしにとって、最大級の知的ヒーローだった橋本治なのだから。

ことに少女漫画評論集『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』では、目の前の世界が全部塗り替えられたといっても過言ではなく、この本が(というかこの発想と文章全部が)好きすぎてどうにかなりそうなほどだった。

『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』が連載されていたのが、『だっくす』という「漫画評論誌」で、わたしは高卒後働くならぜったいに『だっくす』だと思い、高3のとき友達と編集部に遊びに行った。

どうやったら『だっくす』で働けるのか? やはり大学を出てないとだめなのか、何大学だといいのか?

自分にとって大学は、家も貧乏だし勉強嫌いだしで完全に視野の外だったが、とにもかくにも『だっくす』に関わりたいし近づきたい、という衝動のもと御茶ノ水に赴いた。

『だっくす』は橋本氏の連載の他にも、心躍らせ震わせる要素に満ち溢れていた。可能とは思っていなかった漫画家へのインタビューなどだ。後にも先にもあんなに好きだった雑誌はない。(他は一時期の明星とか。あと別冊マーガレット。ブラックジャックが連載されていた頃のチャンピオン)

ところが、御茶ノ水の目的地に着いたら、『だっくす』の編集室は目を疑うくらいみすぼらしかった。
英知とワクワク感の王宮であるはずなのに、6畳程度の埃っぽいボロ屋の一室で、わたし達は申し訳程度の応接セットにちょこんと座った。
ちょうど小森ネコさんがいて、コーラをごちそうしてくれた。小森さんはスラっとしたとてもきれいな女性で、そこだけは少女漫画ぽかったのだが、あとはひたすら雑然とした机が二つか三つ。当時はパソコンなどはないから、紙が上にも横にも広がって量がすごかった。
さらに、その時は小森さんの他に男性編集者もいて、この狭くて汚い空間で男性編集者と一緒にすごすなんて、わたしにはぜったい無理‼ と打ちひしがれた。

 

・・・・こうして、『だっくす』で働く夢はあっけなく砕けた。

◆次号につづく(といいな~)(万一続かなかったらゴメン)


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