鈴木姫花さんの黄色いハンカチーフを飾りましょう

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今年の1月、母にハンカチをもらった。
10年前津波にのまれて亡くなった少女が描いた絵を、ご両親がハンカチにしたという。
母は何枚も購入したようで、「お前にもあげるよ」と1枚くれた。
わたしも断る理由もないので「ありがと」と言って受け取った。

そしたら、ほんとうにこんな事を言っては不謹慎すぎるのだけど、そのハンカチを家に帰って見ているうちに、だんだんと胸苦しくなって、不吉な感覚におそわれ、ハンカチをどうしていいか分からなくなった。
今回、わたしはその経緯を書き記し、最終的には部屋に飾っていることを報告したい。

亡くなった少女は鈴木姫花さんといい、当時10歳。絵を描くのが好きで将来デザイナーになるのが夢だったという。
ご両親は、姫花さんのデザイナーになる夢を実現させてあげたい、との思いから、娘の絵をハンカチにし多くに人に触れてもらっているという。

という背景は、母に聞いていた。
それに加え、どんな絵がハンカチになっているのか説明したい。

一番目立っているのは、画面右の大きな灯台だ。
灯台の展望台には6人の男女が立っており、皆がニコニコと手を振っている。
灯台下には3人の少女が(1人は大人にも見える)、灯台の人々に向かって手を振っている。こちらも皆笑顔だ。
灯台の上と下で手を振り合う、という光景はよくあるのかもしれない。けれど、この灯台の6人は下の人物に向かって手を振っているように見えなかった。
まるで、この地上を去って行く人々が笑顔で「さよなら」と手を振っているように見える。

「いやいやそれはこじつけだろう」と自分に言い聞かせた。言い聞かせたが、早くも不気味な感覚にとらわれ始め、及び腰で絵を見る形になっていった。
灯台横に描かれた太陽とカモメも気になった。
彼女の絵は色彩設計が凝っていて、空を黄色で塗っている。通常は青になるところであるが、海の青と同じになるのを避けるためか全面を黄色にしているのだ。そのため絵はとても明るいのであるが、黄色といえば警告のサイン‥
しかも太陽が真っ赤で、そこへ白と黒で描かれたカモメが突進でもするように、飛んで行っている。
なぜ、太陽とカモメを重ね合わせるのか。
どっちかひとつでいいのじゃないか。
白と黒といえば‥death‥‥
彼女は運命を予知していたのか‥‥

このあたりで当方はハンカチをたたんだ。胸がザワザワしてとても見ていられない。どこかにしまっておこう、と思った。

 

そして今日。

わたしは家の片づけをしていた。そうしたら忘れていたあの黄色いハンカチが出てきた。
またあの不吉な感覚が蘇ってきた。
これはもう今度こそ処分しようと、思った。

しかし、ほんとうに捨てちゃっていいのか。
その前に、予知だの不吉とかじゃなくて、どういう絵なのか、正面から把握してからでも遅くないんじゃないか。
つまりそれは、情報を集めることだ。
彼女のことをもっと知ることだ。

集めた情報↓↓

津波犠牲の10歳少女と灯台をめぐる物語-福島・いわき(高橋宏一郎) – 個人 – Yahoo!ニュース

この記事を読んで、多くのことが分かった。まずハンカチの絵は震災の2年前2009年に描かれたこと。彼女は小学校2年生だったこと。そしてこの絵がコンクールに入賞していたことも。

さらにまた、姫花さんが亡くなった時、おばあさんの家にいたこと。おばあさんは姫花さんの父(すなわち自分の息子)に「姫花ちゃんは自分の家にいるから大丈夫」と安心させたこと。それを受けお父さんが姫花さんの弟の保育園の迎えに行ったこと。

わたしはここらを読んで思った。どうしておばあさんは(おばあさんといっても、多分60代くらいだと思う)自分の家にいれば安心と思ったのだろう。

姫花さんはひょっとしたら、津波がくるかもしれないから高い場所に避難しなくてはならないと気になっていたかもしれない。

けれど、おばあさんが安心だと言うから信じたのかもしれない。

わたしは、おばあさんはテレビを見て安心に思ったのじゃないかと思う。

そしてあらためてハンカチを見ると、姫花さんは、灯台、人物、大地、海と、すべて輪郭を描いており誤魔化しがない。色への意識も高く、一人一人の洋服や帽子を違う色にしている。これは、絵を描くのが本当に好きな子の描いた絵だ。

死ぬのは、きっとものすごく悔しかったのじゃないだろうか。絵が描けなくなるのだから。

だんだん、この絵に近づけてきた気がする。
わたしは試しに、ハンカチの写真を撮りペイントソフトで真っ赤な太陽を消してみた。
物足りない絵になった。
赤い丸があることで、画面に活気が生まれていることが分かる。生命力というか。
太陽は必要である、と考えられるようになった。
今度はカモメを消してみた。
太陽を消した時以上にかっこ悪くなった。
背景に日本国旗がはためいているようでださい。
彼女は、美を求める本能から太陽とカモメを描いたのだ、と思えてきた。

↓こういうのもみつけた↓

震災犠牲10歳少女の夢かなえたハンカチ 10年で販売1万枚、収益は全て寄付(47NEWS) – Yahoo!ニュース

こちらは、同じく高橋氏の描いた記事で、今年の2月とあたらしい。
姫花さんのお父さんが講話という形で、自分で震災時のことやハンカチのことを語っている。

私の話は失敗談なんですね。当時私が賢い判断をしていれば、娘や母を助けてあげられたかもしれない。私の経験は成功ではないので、得られる教訓はないんです。

 それでも年に一度、長崎の島原中央高校が修学旅行で塩屋埼灯台に来てくれて、話をする機会があります。高校生には、自分自身が死なないことが一番大切ですと言っています。まず自分が死なないこと。

 海であっても山であっても、どんな場所でも、津波、地震、火山の噴火、洪水、どんな状況でも、まず自分の命を大切にしてください、自分が死なないことを第一に考えてくださいと。そのためには、たくさんの知識をつけて、身を守る手段を学んでくださいと。47news

姫花さんのお父さんの言葉、胸に刻みたい。

誰かの情報をうのみにするのじゃなくて、自分で学ぶ。(塾の先生なので、特にそう教えてくれるのかもしれないが)
学んで知識をつけて、自分の命を大切にする。

とかく、人とのつながりが大事だ、絆だ、集団の和が大事だ、迷惑かけるなだといいがちなところを、そうじゃない。ぜんぜん。

そしてまたハンカチを見る。

灯台の6人が笑って手を振っているのは、

「いつまでも泣いてばっかりいないで、こっちは元気だ。けっこう楽しいぞ。お前達はあの太陽に向かって力強く羽ばたけよ。どんなに暗い夜もこの灯台が行く手を照らしてくれるさ。諦めるな」

と、生き残ったワレワレを励ましている、ように、見えてきたのである。