2021年12月21日記

作:唐十郎
演出:金守珍

出演:宮沢りえ、磯村勇斗、愛希れいか、岡田義徳、
大鶴美仁音、渡会久美子、広島 光、島本和人、八代定治、
宮原奨伍、板倉武志、奈良原大泰、キンタカオ、趙 博、
石井愃一、金 守珍、六平直政、風間杜夫

文化村シアターコクーン

コロナ禍がほぼ明けて、ようやく劇を観に行けるようになった。
最初に選んだのがこれ、唐十郎作品の『泥人魚』だ。
選んだ動機が「ナマの宮沢りえ、磯村勇斗を視たい」という単純なものなので、すっかり油断していたが、とんでもなく難解な劇だった。
しかしこの芝居、

本作は2003年4月『劇団 唐組』により初演となり、五十五回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞、第三十八回紀伊國屋演劇賞(個人賞)、第七回鶴屋南北戯曲賞、および第十一回読売演劇大賞 優秀演出家賞を受賞した傑作戯曲として知られている。

というのだから、演劇関係者にとっても重要な作品なのかもしれない。

諫早湾干拓事業に材を取ったという『泥人魚』。2003年の初演時頃は、「干拓事業の抜本的な見直し」や「28日間の短期間に堤防を開門」するなど、時事問題としてもホットだった。調べると今も開門を求めたり却下したりと事態が収拾されているわけではない、とはいえ、どうせ今の時代にやるなら、環境問題にもっとダイレクトにつながった他の材でやってくれても良かったのに。

と、思ってしまったのは、磯村演じる「蛍一」のセリフが長くて長くて、よくそれだけのセリフ覚えられたなと感心してしまったからなのだ。どうせ長いセリフなら、もっと今日的な方がいいじゃないか、と。

が、そんなこと言ってもしょうがない。そういう次元の事じゃないんだろう。仕方ないから、後日、『泥人魚』の原作を読んでみた。活字でシナリオを読むと、舞台よりはずっとスッキリと分かりやすい。けど、風間杜夫、72歳で「アングラ」に挑戦に書いてあるけど、今回の泥人魚も唐十郎氏自身が演出に関わって、しかも「泣いている」そうだ。つまり、これで(分かりにくくて。すっきりしてなくて)いいのだ。

原作に加え『魔都の群袋』という初期エッセイ集を読んだ。「唐十郎」(からじゅうろう)の魅力がどこにあるのかちょっと分かってきた。度を越えた人間関係の濃密さと距離の近さだ。言って見ればソーシャルディスタンスの真逆。コロナ時代の反逆児。うわべだけの人間関係なんかぶち壊せ、という気迫。とことんお前に食らいついてやる、という嬉しいような迷惑なような情念。

この芝居は、上品すぎる「bunkamuraシアターコクーン」で演るのは違うんじゃないか、という違和感が勝ってしまった自分であるが、これもまたひとつの挑戦なんだろうな。

リンク

イチから分かる諫早湾干拓問題 21日から差し戻し審(日経) ←ビジュアル的にも分かりやすい。劇に出てきた泥水も「これか」と思った

◇【みんなの口コミレビュー】舞台『泥人魚』の感想評判評価 ←熱い感想が多い。見習いたい

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