ダット病院が何をやっている病院なのか興味があるかもしれない。なんなら教えるけど別に虐待とかしていない。入院しているのは、場の空気を読めない、読み間違う、読みすぎる、読んだあげく石になる、などの人たちなので、外国だったらそこらへんにいる人だ。
あいにくここが日本国だったため、厳しい掟に耐えきれずダット病院が安息の地になってしまった。※1
その日はヒマだったので、せいしん業界で一番ヤバい入院形態「措置入院」のヤベちゃんとおしゃべりして過ごした。
ヤベちゃんは中学の時からせいしん科に入退院を繰り返している現在40才の女性。東京都×◎区在住。
おとうさんが鳩レース用の鳩をたくさん飼っていて、ヤベちゃんは鳩小屋で育ったらしい。福祉の人が証言するに、とんでもなく不潔、フンだらけ、ありえない環境らしい。何十年もの時を経て、今度こそヤベちゃんを両親から引き離しグループホームに入ってもらおうと地域福祉の人は奮闘している。
福祉の人も大変だなあと思う。けどあたしは福祉の人じゃないのでのんびりしゃべるのみ。じっさいヤベちゃんは入院している限り、モンダイは起こさない。家族が、「措置入院だと金払わないで済む」という理由でいつまでも措置解除になっていないだけ。
「おうちでは何を食べてたの?」という話になった。虐待環境にいたヤベちゃんなので、何を食べていたのか気になったのだ。
「うーーん」 はっきしない。「なんだろうなあ」
ちなみにヤベちゃんは、学校には行っていたので、けっこう難しい漢字も読める。「棒棒鶏」とか。「回鍋肉とか」。
「あ、そうだ、お父さんが作ってくれたタコ焼き美味しかった!」
目を輝かせて言う。
タコ焼きとな? タコ焼きが主食やおかずになるかな? おやつに作ってくれたってこと?
何度か関わったけどこのお父さん、すぐに怒って怒鳴り出すし、人の胸ポケットになんかねじ込んでくるし、もういやでたまらない。ヤベちゃんも殴られながら育ったらしい。お母さんも殴られてた。
ああ、そうか。いわゆるテキ屋? だからタコ焼き?
あたしの頭の中に、あの乱暴な親父がタコ焼きをくるくる回している姿が浮かんだ。手慣れた手つきだ。外はカリカリがいいな・・・ タコはうんと大きいのがいいな・・・
それで思ったんだよ。
真贋のはっきりしなくなった世の中だけど、何がAIだかわからなくて、映像が全部嘘とかフェイクかもしれない世の中だけど、本物と偽物はある、断じてある、と。
中にタコの入っていないタコ焼きは偽物、タコが入っているのが本物。
あと騙されるのが、大きなネギや大きなタコを露天の前面に飾ってるくせに、食べたら小さいのしか入ってないの。てか、ネギなんかほぼない。タコさえ確認できればアリバイ証明になるとでもいわんばかり。
「あれは騙されるよねー」(あたし) 「そうだね」(ヤベちゃん)
ヤベちゃん、心身ともに苦労してきた割に面白い人だから、こっちも熱くなった。
さて。