日本航空123便墜落事故がなぜ起きたのか、多少なりとも、わかった、気がする。

この一週間以上、39年前の8月に起きた「日本航空123便墜落事故」の関連書籍とYouTubeを漁る日々だった。

まず何よりも思ったのは(そして場違いにも感動したのは)、この事件は、たとえ39年の歳月が流れていようと、まったく風化していない。それどころか、新たな証言や新たな知見が登場し、さらにYouTubeのような新たな伝達手段を得たことにより、息吹を新しくしている。

もちろん、土台となって真の底力を発揮しているのは書籍だ。最初に疑問を呈した青山氏が2010年『天空の星たちへ』、2017年に日航123便 墜落の新事実を、さらに現在進行形の裁判を記録したJAL裁判(2022年)を上梓し世間に一石も二石も投じた。ちなみに現在も続くJAL裁判で遺族は、ボイスレコーダー及びフライトレコーダーの全データを開示せよと請求している。

ボイスレコーダーの音声は、分かりづらい話しだが部分的に存在している。2000年に「流出」しマスコミがいっせいに公開したらしい。このブツに対して『JAL裁判』の中で青山氏は

 当時は、心ある事故調査の関係者が、報道各社に匿名で送ったという美談になり、ドラマまで制作された。その関係者はいったい誰なのか、いまだに不明のままである。高浜機長の声が本人であるという親族の証言から、ボイスレコーダーの一部と思われたのだ。

 しかしながらその内容は、都合良く切り貼りされたものであり、それが世間に流布されているのである。(中略)

ところが、それが一人歩きを始めて世の中に出回り、今やネット上にたくさん溢れてしまったことで、「遺族が今さら何を情報開示請求するのか」とか、「なぜボイスレコーダーを聞きたいのか」、「聞きたければネット上のものを聞けばよい」という雑音や無知の書き込みも出てきた。

と、否定的だ。ただ、高浜機長らクルーへの誹謗中傷は止まったので、その功績はあったとも。

しかし、それ以外にもこのブツ、有用性はあった。

123便の遺族である小田周二氏が書いた『524人の命乞い~日航123便乗客乗員怪死の謎』。

この本の中で著者は、123便が18:24:35 衝撃音があってから、つまりこの時に垂直尾翼の大半が吹き飛んでから、18:56:28に御巣鷹の尾根に墜落するまで、一体何があったのか、ということをボイスレコーダーの記録を参照しながら、あまりにも鮮明に表現してくれているのだ。

そしてその過程の中で、123便の乗客達は墜落後に「見殺し」にされたのではなく、より積極的に殺されたということが、明確になっていく。想像だにしなかったことだが、123便は飛行している最中に、自衛隊機に撃墜された。その推論(と、著者自身も言う)がもはや推論の域を出てリアルに眼前に迫ってくる。

事故調の「圧力隔壁うんぬん」はもう笑い話にもならないくらい、論外だと分かる。

著者の小田氏は、高校一年生の息子さんと、中学一年生の娘さんが123便に乗っていた、その遺族だ。この方は、いったい、何回、いや何万回、「流出」ボイスレコーダーを聴いたのだろう。仮に切り貼りだとしても、高浜機長らは、とんでもない努力と死闘を繰り広げ、乗客達を、小田氏にとっては自分の子どもたちを守ろうとしていた。そのことが、どんなに救いであることか。

それに、クルー達が必死になっている声を聞きながら、同じ時刻、息子と娘がどんな思いでいたか? 何千万回考えたのだろうと想像してしまう。

小田氏の筆致からは、機長とクルーへの深い感謝と尊敬の念を感じ取った。

それに、事実、4名の命を救うことができた。そういう意味でも死闘は無駄ではなかった。

わたしは4週間前に、「自衛隊がミサイル発射練習でミスって民間機に当ててしまった」ことが真相と聞きかじった。しかし、だからといって機長はなぜ横田基地に無理矢理でも着陸しなかったのか? と疑問になった。それで、「追尾してきた自衛隊機に説得されて機長は山につっこんだのかな。やはり自衛隊出身だとそうなるのかな」と思っていた。が、とんでもなかった。そうじゃない。そうじゃない。


ところで『命乞い』の中で、横田基地との更新記録があるはずなのに消えている旨が書いてあった。さっき見ていたら、このテーマに連続的に取り組んでいるユーチューバーが、世界中の航空機事故のボイスレコーダーを公開しているYouTubeを紹介していた。

REAL Cockpit Voice Recorder and ATC.JAPAN AIRLINES 123 CRASH (12 Aug 1985). REAL ATC

これの6:25くらいにYOKOTA基地からの交信が入っているのだ。

とはいっても、機長の「このままでお願いします」に相応する交信の記録は聞こえない。(怖くてあまり聞けていないのであるが…)(相手が自衛隊なら周波数?みたいなやつが違うのか)(この意味がわかる人は教えてほしいものである)


YouTubeで何が出てくるにしても、ボイスレコーダー及びフライトレコーダーの全データを、JALは公開すべきだ。なにせ、ネットの情報がどの程度当てになるものか? 実際、日本航空123便墜落事故 – Wikipediaの説明はひどい。あと、ChatGPTもとんでもなく権力者側つまり事故調とそっくり同じことを言っていて、がっかりした。というか不気味すぎ。もう二度とChatGPTは褒めたくない


自分が参考にした情報

#5 森永卓郎×深田萌絵 『言ってはいけない』失われた30年と日航機事故

日航123便 墜落の新事実 :青山 透子|河出書房新社

第76回:日航123便はなぜ墜落したのか(森永卓郎) | マガジン9

↑上の3つは、小田氏の「推論」にはいたっていない。

(40) 日航機墜落事故から、37年【ニュース】神保哲生×荻上チキ – YouTube

↑123便に限らず、日本の事故調査のやり方はひどいとのこと。再発防止優先で考えるべきと

StarsAndStripesに寄稿した、アントヌッチ元中尉の文。+日本語訳

↑引用ではなく全文なのでスゴイ。言わないでおれないと。

たぶんこれが国土交通省の事故調報告 pdf